「ダンナの実家の墓には入りたくない」年末年始の帰省で心に巣くう“女の本音”
葬儀、埋葬、追善供養の多様化
核家族化と少子化が進み、先祖からの墓地、墓石を守る習慣も薄れて、お寺の収入源である葬儀、追善供養、ご法事と言った習慣が薄れてきたためにお布施や戒名料などの収入が減り、檀家寺が自己破産するような時代になってきました。
近年、お墓に対する価値観も非常に多様化してきており、必ずしもこれまでのように高価な墓地を求めたり、百数十万の墓石を買って自分たちがそこに埋葬してもらうということでもなくなってきたのです。
また、これまでのように先祖代々のお墓に埋葬してもらうことを希望せず、自然葬や樹木葬のように、一切のお墓を設けずに土に還すことを希望したり、お骨の一部を自然に散骨したり、あるいは、専門の業者による小さな納骨堂に収めたりというようなかたちをとるようにもなってきました。
いつの時代も時の流れと共に価値観が変わっていくのは自然のことであり、葬儀、埋葬、ご法事、追善供養、こういったことについても随分と様変わりしてきました。
きょう紹介する記事は産経新聞の記事であり、上記のような埋葬に関する価値観とはまた別な問題かもしれませんが、人間の感情部分が埋葬に関わっているという点では関連性があろうかと思います。参考になさってください。
以下、産経新聞 1月11日(日)8時5分配信
「夫の家墓(いえはか)に入りたくない」こんな声が、女性の間でしばしば聞かれる。
「先祖代々の墓」「○○家の墓」に眠っているのは夫の先祖や祖父母でも、妻にとっては知らない人ばかり。
核家族化で「家」意識も希薄になっている。
ところが、年末年始の帰省時にお参りをすると、家と向き合うことになり心の中に葛藤が生まれるようだ。夫には言えない妻の本音を探ってみると…。(寺田理恵)
入っているのは知らない人ばかり
東京都の会社員、上田幸子さん(43)=仮名=は毎年、正月に関西にある夫の実家に帰省したとき、墓参りに行くのが憂鬱だ。
「ダンナが長男だからといって、関西に住んだこともない私が、何でこんな知らない人のお墓に入らないといけないのか。自分の実家の父にそう言ったら、『家族だろう』と叱られました」
墓参り自体が面倒なわけではない。北関東にある自分の実家に帰ったときは墓参りを欠かさない。
祖父母が眠っていると思えばこそ墓石を磨き、草をむしり、花も替えて祖父母を思い出しながら手を合わせる。
一方、義父母とは確執はないものの、しばしば価値観の違いを感じるという。
「ダンナの実家は郊外の閑静な住宅街に住み、子供は幼稚園から私立へ通わせるような家庭。私の実家は庶民なので、何となく合わない」と悩ましげだ。
「家」意識が重い
年末年始の墓参りが憂鬱なのは千葉県の会社員、山本洋子さん(47)=同=も同じだ。
「ここに入るのかと思うと、漠然とした抵抗を感じます。入っているのは他人ばかり。お参りの作法も私の実家とは違う」
隣の県にある夫の実家では、親族総出で先祖代々の墓にお参りする慣習がある。
驚いたのは、墓石に水を掛けて掃除することだ。自分の実家では、「ご先祖さまの頭から水を掛けるようなもの」と戒められ、乾いた布で磨き上げている。
「いわゆる嫁扱いをされたことはないし、義母とは仲良し。でも、お墓の話になると、自分は夫の家の人間になったと思い知らされるから、まだ話題にしたくない」
戦後の昭和22年に民法が改正され、「家」制度が廃止されたものの、お墓は「○○家の墓」が一般的だ。
高度経済成長期に伴って核家族化が進み、長男といえども親世代と同居しない家庭が増えたが、長男が墓を継承する慣習は根強く残っている。
上田さんも山本さんも「長男の嫁」ながら義父母と同居していないうえ、共働きで顔を合わせる機会が少ないためか義父母と軋轢(あつれき)はない。
お墓を大切にする気持ちはあるだけに、家墓を前にすると日頃は希薄な「家」意識と向き合わざるを得なくなるようだ。山本さんは「夫婦や個人の墓だったらよかった」と漏らす。
東京都の会社員、木村恵子さん(46)=同=は、夫の実家の墓が東京から新幹線を使っても片道5時間かかる遠隔地にある。
夫にとっても、ほとんど縁のない場所だ。「知らない人ばかりの墓」に入ることに抵抗を感じる。そのうえ、墓を受け継ぐべき子供はいない。
「子供でもいれば待っていられるかもしれないけど。自分の実家の墓に入るなんて言ったら、しゅうとめと確執があったと誤解されそう。でも今、死んだらダンナの手で田舎の墓に入れられてしまう。でも、今のうちから嫌とはいえないし」と堂々巡り。
お墓をめぐっては、内閣府(旧総理府)が平成2年に実施した調査で散骨を容認する人が少なくないことが判明し、話題になった。大都市圏への人口流入が進んだうえ、少子高齢化の進展もあって、地方にある墓の継承者がいない問題もこの時期に顕在化してきた。
それから四半世紀が過ぎた今、墓の継承は50歳前後となったバブル世代に身近な課題となっている。上の世代より、きょうだいの数が少ないだけに深刻化しているようだ。
少子化で継承者なく
東京都の会社員、山田優子さん(52)=同=が夫の実家の墓に入りたくないのは、両家の墓の継承問題があるからだ。
義父母も自分の父母も、男の孫は山田さんの長男と次男だけ。
2人はそれぞれの墓の継承者として期待されており、山田さんが夫の方に入れば、自分の実家の墓を継承する方の息子だけが家族と離ればなれになる。
いずれ息子たちがそれぞれの家庭を持つと理性で分かってはいるが、今は4人家族で一人だけ墓が別になるのは避けたい気持ちが強いという。
「夫や子供たちと一緒に入るのは、女性の普遍的な願いでは。でも、事前に意思表示しないと私は夫と一緒に入れられてしまう。かといって、違う墓に入るといえばひと悶着(もんちゃく)ありそう」
墓の継承者は今や貴重な存在だ。神奈川県の会社員、鈴木美香さん(47)=同=も、両家の孫世代は鈴木さんの一人息子だけ。義父の本家は九州で、生前に義母が用意した墓も九州にある。往復するのに時間も交通費もかかるので、墓参りはもっぱら夫と息子だけが行く。
「夫が長男なので、子供のいない親族たちの遺骨も引き受けています。義父のお墓に手を合わせる息子の姿を見て、未婚の叔母が『男の子がいるからお参りしてくれる』といって一緒に入りたがりました。
その場で『どうぞ』と答えましたが、息子一人に全てを背負わせたくないのが本音」
先祖は「自分の近親者」
墓の形態は家墓が主流でも、「家」をめぐる意識は変化した。
第一生命経済研究所が平成21年、35~79歳男女600人を対象に実施したアンケートによると、「先祖とは誰か」(複数回答)について、「自分の親や祖父母などの近親者」と答えた人が73・2%で最多。「配偶者の親や祖父母などの近親者」(45・5%)を上回った。
「誰とお墓に入りたいか」では、「先祖代々のお墓」(39%)が最も多かったものの、男女別にみると男性が48・6%いたのに対し、女性は29・9%にとどまり、男女間の意識の違いが鮮明に出た。
次に多いのは「今の家族で一緒に入るお墓」(25%)で、男性の23・4%に対し女性は26・5%と比較的高かった。
3番目の「お墓はいらない」(20・5%)は男性では14・7%と低かったが、女性では26・2%を占めた。同研究所は「女性では墓に対する意識が多様化している」と分析した。
こうしたニーズに対応し、血縁や地縁に関係なく入れる共同墓や、記念樹の周りに合葬する樹木葬など、墓石を必要としない形態も増えている。
ただ、女性の社会進出が進み、ライフスタイルが変化する一方で、先祖供養と墓を大切にする気持ちを無碍(むげ)にもできず、口には出せないネガティブな感情が心に渦巻いているようだ。
以上。ここまでが産経新聞からの転載です。
今回の転載記事を読んでもわかるかと思いますが、故人の供養、先祖の供養という姿をみますと、旧来の伝統に沿ったかたちの内容であることがうかがえるかと思います。
これは長い歴史のなかで営まれてきた檀家制度によるもので、それが社会通念として私たちの暮らしに溶け込んでいたものですから個人の問題ではなかったということであります。
しかし、今日、確実に葬儀や埋葬方法、追善供養についての価値観の合理化が進み、かつ多様化してきました。
同時に、本当の供養という意味合いからすれば、必ずしもこれまでの伝統や文化、習慣による供養の姿というものが真の供養になっていたかとなると、そうは言い難いものがあります。
以下。ここに過去の記事、供養についてリンクしておきます。参考になればと思います。
「供養」
「供養」
「お経と真の先祖供養のあり方」
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