自分をつくる


今年もあと二カ月あまり、10月も半ばを過ぎました。私たちは新年を迎えると心新たに期するものがありますが、時の流れは変わることも無く過去も、現在も、未来も一定の法則と秩序の基に流れております。
人間、心新たにすることも大切ですが、原点に立ち返って基本を忘れないことも重要であろうと思うのです。
昨年は三陸沖の津波被害と原発の被害によって多くの犠牲がありました。近年は我が国の経済にとって大きな試練の時期となっていますが、これは同時に世界的な現象でもある。
広げ過ぎた高度経済成長も縮小均衡に戻さなくてはならないだろうし、内需の拡大とはいっても少子高齢化や企業の国外進出が自国経済の衰退に拍車をかけていることは企業努力だけの問題ではなく、行政の面でも根本的に改善努力を要することは誰の目にも明らかである。
震源地の作用と反作用はその振幅が大きいほど幅広く動くが、このような働きは自然現象だけの問題に限ったことではない。
右肩上がりの経済成長もまたその反作用は大きく働き、近年の経済恐慌を生み出している。
私たち人間の自己保存と足ることを知らぬ欲望の愚かさによる反作用も世界経済の動きと共通することが良く理解できるだろう。
私たちは、どのような状況のなかでも自分を見失わずに生きるために、先ずは、自分をつくるということが大事である。去年は勿論だが、今年もそうだし、この先もそうしなくてはならない。
いつの時も、いつの時代も、今というこの瞬間を知足(足ることを知る)の心と生活で生きていかなければならない。
自分をつくる、ということは家づくりの基礎工事にも見ることができる。ビルひとつ建てるにも基礎がしっかりしていないと少しの地震にも倒れてしまう。
何をするにも基礎が大事であり、自分の心が不動のものとなれば、どんな事態が起こっても揺らぐことも倒壊することもない。
しかし、心ができていないと、人の噂や、変わった話を耳にすると、心がゆらぎ自分を見失うことになる。
本来の自分というものは神性をいただいた魂であり、慈しみと愛の心を持った自分自身である。
そうして、神性の自分を確認する物差しというべき基準が八つの正しい生き方(心の眼を開く・偏見からの脱却)であり、心に灯をともし、調和の輪を広げていくのは、人間として当然の義務なのだ。
私たちがあの世からこの世に出生してくるときは誰彼の差別なく、みんなが、今度はこの点を修正して、人々と手を取り合って生きていこうと心に誓って出てくる。
しかし、肉体をまとい、環境や因習に慣れてくると、出生前の誓いを忘れ、五官六根を中心とした自我我欲に翻弄(ほんろう)されてしまう。
この地上界はもともと不安定な物質界であり、心と物の関係が容易につかみにくく、心の本質も理解できにくいので、どうしても物質中心の考え方に傾いてしまう。
しかし、これでは折角の修業の目的とチャンスが失われてしまうことになるのである。
古来より八つの正しい生き方が心の灯として存在し、私たちはこの基準に沿って歩むことで心の安定もできるのですから、この八つの正しい道、すなわち八正道を軸に、毎日の生活を送ることである。
今年もあと二か月ちょっと、人間はしっかりと己をつくり、来るべき年には外に向かって多くの人々に手を差し伸べ、慈しみと愛のある行いを施していかなければならない。
それが先達といわれるあなたの使命であり、現在の人々の役目であろう。
近年の世界的経済不況と人心の乱れによる犯罪などをみるとき、何故このような恐慌が生じてきたのかを、静かにながめ、考察する良き機会ともいえる。
心の偉大さは時と共に明らかになるだろう。
今こそ自分をつくっておきたいものである。
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