心の富・希望と安らぎの光り


自信喪失・うつ病・自我・言霊
アンドリュー・ソロモンというアメリカの作家がいます。彼は自分のうつ病体験を『真昼の悪魔―うつ病の解剖学』という著書に記していますが、その中で、うつになって失った最も大切なものは友人であると告白している。
医学博士の高田明和氏も『生きながら死んでいた私』と言い、多くの友人を失ったと著書で告白しています。
高田氏は医師としてアメリカの留学生活を終えて日本に帰ったとき、同期生たちの出世、研究室や大学の教授になっていたかつての仲間と周囲の環境にカルチャーショックを受け『どうして生きていけばよいのか』と悩み、自分を劣ると卑下し、次第にうつになっていった時期の苦しい経験は忘れられないとある。
このときの高田氏は他人と自分を比較した価値観に囚われていたのである。相対的価値観というのは自分と他人を、あるいは他人同士を比較してしまうところに問題があり、そのことが苦悩の原点となるため非常に危険をはらんでいるものだ。
鬱になると、非常に不安になる。自責の念が強くなり、いつも自分を責める、過去の栄光に拘る、人に会うのが嫌になる、光が苦手になる、高い音がダメになる、恐怖心がある、悲しみが襲ってくる、外に出るのが嫌になる、過去に拘る、愚痴をいいやすい、怒りやすい、死を意識する、眠ることが怖い、朝の起床が辛い、睡眠が浅い、怖い夢を見る、体が重い、倦怠感が強い、食事がとれない、薬に依存している、等々これまでにない感情が表出してくる。
『そんなに気にすることないよ、』『自分を責めないで』『大丈夫だから』などと言ってもらいたいと思うようになる。
高田氏も、あまりの苦しさに誰かれ構わず電話をして苦境を話し、相手の迷惑もかえりみず、くどくどと気持ちを訴えたといい、友人と食事をするときなどは酒の勢いを借りて変なことを言い、後から『なぜあんなことを言ってしまったか』と激しい後悔に襲われた。
そのことで再び電話をして弁解をするから、一層、あいては遠ざけるように離れていった。高田氏のうつ病の理由の一つは自信喪失だというが、これは周囲と自分を比較したことが原因であることはいうまでもない。
人と比較して自分が優位であれば満足していられるが、相手が優位だと嫉みや、自分への卑下につながる、これは間違いなくエゴ(自我心)である。
私の所に、うつ病で相談にみえた青年の言葉が証明するように、『認められたい!』がために何かをするのではなく、何かをしたことが認められたということにならなければ心が病むことになろう。
認められたいという思いに囚われているということは、自己主張の気持が背景に強くあり、そのような気持ちはいつも周りの反応に様子をうかがい、他の目を気にした行動をすることになる。これでは心が疲れて当然なのだ。
私たちは自分と他人を比較した考えを持つべきではない。
自信の喪失や卑下は高田氏が言うように『自分を信じる』という気持ちが失われ『心が無くなった』という感じが一番言い表しているということになりかねないからだ。
氏は友人の精神科医に相談して薬物療法を試みたが悪化するだけで薬の副作用にも苦しんだ末に意を決して断薬し、学生時代に経験した禅に再度の救いを求めた。
しかし、禅に対する捉え方を心得違いして教条的(守るべき教え、規則、知識偏重の理解)に解釈したためにかえって迷うことも味わったのである。
結局、迷い苦しみの末に一念発起、『溺れる者藁にもすがる』の気持ちで『全ては良くなる』、『悪い事は起こらない』と毎日何度も念じ続けたといいます。
前向きな言葉、明るい言葉、積極的な言葉に頼り続けていくことで自分の心が楽になり体が癒えていくことを実感できたということです。
『何をしたか』は大事ですが、これが全てではない。『何を思ったか』『何を言葉にしたか』も大事であることを、立ち直ってみて確信が持てたと言いきっています。
言葉の力は頭で解釈する以上に素晴らしい結果が現実となって顕れることを高田氏は、『言霊』の力は自分のうつ病を立ち直らせたと紹介している。
うつ病のために心身ともに弱っていった高田氏は藁にもすがる思いで、あっちこっちの禅僧の老師方を訪ね歩き質問をした。
仏教では因果律(原因と結果の法則)を説いていますが『良い言葉を発すればよいことがありますか?』と。しかし、誰一人とし明確な答えをされた老師方はいなかった。
結局、外に答えを求めて歩いても答えがないと知り、自分で乗り切るしかないと決心した瞬間であった。不思議なもので、この時に自分の心が軽くなったことを深く実感したという。
このような高田氏の経験をみればわかるように、依存心が強いうちは、決して悩み、苦しみの解放がないということだ。
人からアドバイスをもらうことはできるが、実践して乗り越えるのは自分自身であるということである。
しかし、正しいアドバイスも本人の心が頑(かたく)なになっていたり、何かに執着していれば、必要なものが心に届くことはない。
うつ病を患う人たちは総じて真面目な人間ではあるが、想い、考え方が偏りすぎているという共通点がある。健康な人以上に、自我心、執着、自己中心、相対的価値観、こだわり、といった心の軌道修正が必要なのである。
事実、この心の傾向性に気づき、修正できた人たちは、うつ病から解放されていく。そして、私のカウンセリングは心療内科や精神科のそれとは全く違うと相談者自身がいう。
『全ては良くなる』、『悪い事は起こらない』こうは言ってもこの世の中いいことばかりではない、現実は辛いことの方が多い。言葉だけの空回りではないのかと思うだろうが、実際にこれを言葉にするとその瞬間にホットした安心感から安らげたといいます。
地獄から自らの力で這い上がった高田氏の言葉には真実がある。知識ではない。
これが逆に『自分はダメだ、何もいいことなんかない、全ては悪くなる』と思ったり、言葉にしたらどうだろうか。ほぼ間違いなく気分が落ちていくだろう。
『冷暖自知』という言葉がある。冷たさも暖かさも自分の手で触れてみればわかるように、塩の辛さ、砂糖の甘さは学問知識では理解できないが、なめてみればすぐ分かる。
言葉の力は疑念を挟むより実践してみるとわかる。それが言霊です。
失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる。自分の心を奮い立たせる最高の妙薬、それが言霊である。
言葉の力は、何も宗教の世界だけの特権ではない。
これまで成功された先駆者たちの信念には必ず心から発する良い言霊として実践から湧き出た前向きな生き方、つまり積極思想がある。
努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る。
しかし、努力したことが全て報われるとは限らないだろうが、成功した者は皆すべからく逆境と苦労を乗り越えて努力している!
私は、経済的な富や地位や名誉を得たものを成功者とは言わない。私がいう成功者とは心の富に気づいた人のことである。
言葉は大切に使いたい。
希望と安らぎを与える光として。
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