うつと言霊

岩手県 盛岡市 うつ病
高田明和氏 昭和10年生れ76歳 医学博士
ニューヨーク州立大学名誉教授 浜松医科大学生理学教授を歴任、同大学名誉教授。昭和女子大学客員教授。アジアパシフィック血栓止血学会名誉理事長。著書多数。高田氏は40歳のときに、うつ病を患い闘病生活にはいる。
アンドリュー・ソロモンというアメリカの作家がいます。彼は自分のうつ病体験を『真昼の悪魔―うつの解剖学』という著書に記していますが、その中で、うつになって失った最も大切なものは友人であると告白しています。

 『生きながら死んでいた私』と言い、高田氏も多くの友人を失ったと告白しています。アメリカの留学生活を終えて日本に帰り、周囲の環境にカルチャーショックを受け『どうして生きていけばよいのか』に悩み、次第にうつになっていった時期の苦しい経験は忘れられないとある。

鬱になると非常に不安になる。自責の念が強くなり、いつも自分を責める。そのことを身近な人に話し『そんなに気にすることないよ、』『自分を責めないで』『大丈夫だから』などと言ってもらいたいと思うようになる。

高田氏はあまりの苦しさに誰かれ構わず電話をして苦境を話し、相手の迷惑もかえりみず、くどくどと気持ちを訴えたといい、友人と食事をするときなどは酒の勢いを借りて変なことを言い、後から『なぜあんなことを言ってしまったか』と激しい後悔に襲われた。
そのことで再び電話をして弁解をするから、一層、あいては遠ざけるように離れていった。
高田氏のうつの理由の一つは自信喪失だという。『自分を信じる』という気持ちが失われ『心が無くなった』という感じが一番言い表しているという。
高田氏は友人の精神科医に相談して薬物療法を試みたが悪化するだけで薬の副作用にも苦しんだ末に意を決して断薬し、学生時代に経験した禅に再度の救いを求めた。
しかし、禅に対する捉え方を心得違いして教条的に解釈したためにかえって迷うことも味わった。(教条的―守るべき教え、知識だけの理解)
結局、迷い苦しみの末に『積極思想』の本に出会い一念発起、『溺れる者藁にもすがる』の気持ちで取り入れ『全ては良くなる』、『悪い事は起こらない』と毎日何度も念じ続けたといいます。

前向きな言葉、明るい言葉、積極的な言葉に頼り続けていくことで自分の心が楽になり体が癒えていくことを実感できたということです。

『何をしたか』は大事ですがこれが全てではない。『何を思ったか』『何を言葉にしたか』も大事であることを、立ち直ってみて確信が持てたと言いきっています。
言葉の力は頭で解釈する以上に素晴らしい結果が現実となって顕れることを高田氏は『言霊』の力は自分のうつを立ち直らせたと紹介している。
続きは次回まで