不平等で育つ心
就職活動、就職難、専門学校、就職率、これらは就職に関する言葉として耳にする機会が多い。
まず、このブログを読んでくださっているあなたに聞きたい。
中学、高校、あるいは大学と6年ないし10年以上英語を学んでこられて、いまあなたは英語が話せますか。小学校6年生の漢字が全部書けますか?
英語が話せなくても、漢字が書けなくても、高校で学ぶ微分積分ができなくても、たいていの社会生活は支障なく送れるものです。
それでは、あなたは何のために学んできたのか。
なぜ子どもを「勉強、勉強」と追い立てるのか?
高校に通学している子どもが卒業後の進路について、これといった目的をもっているわけでもないし、『クラスメートが大学に行くから自分も専門学校に行きたい』という。
よく考えたら18歳でしっかりと自分の夢に向かって進路を定めて突き進んでいる子どもはでれだけいるのか。稀なはずである。
『専門学校に行って何をしたいの?』と聞くと『特にない』という。
『就職できそうにないからとりあえず専門学校にお入ってみる』という子どももいる。
こういうことの動機で高い授業料を支払い単身で寮に住ませたり、アパートを借りてやったりと親の負担も大変なものである。
古い私ごとで申し訳ないが、私の学生時代は(50年前)、勉強がまるっきりダメで、通知表も簡単明瞭、1・2・1・2の行進曲そのものだった。
それでも温情だけで高校を卒業(44年前)させてもらって社会には出た。
20代は仕事もいくつも変わり、失敗ばかりの連続で借金も背負った。
30代になって全国24店舗の支店を持つ中小企業の支店長として20数名のスタッフと働いた。
英語が必要なこともなかったが、微分積分が必要なわけでもなかった。
必要なのは、どうしたら皆が楽しく働いてくれるのかということと、赤字支店を黒字支店にすることだけだった。
後には引けない崖っ淵だった。なりふり構わず働いた。
しかし、20代のたくさんの失敗が生かされた。
支店は黒字になり、3年後には閉鎖まじかのワースト支店から24店舗のベスト3までに復活できた。
私が覚えた漢字は学生時代より、必要にせまって社会で学んで覚えたことの方が多いだろう。
決して子どもの頃から記憶力がずば抜けていたわけではなく、乏しいほうだった。
幼少の頃からの極貧が私のガッツを育んでくれたと思っている。
私は子どもたちと親御さんに言いたい。何のために学ぶのか、学ばせるのかと・・・。
それは生き抜くための知恵を身につけるためではないのか?
知識を詰め込むことに目的があるのではないと。
資格を取ることは、目的ではなく手段だということ。故に資格だけにこだわっていては真実を見失うということ。
人生、明日は何が起きるか分からない。
苦難を乗り越えてゆくには周囲に自分の思いを発信したり、状況によっては助けを求めることも必要だ。
学校で学ぶ基本的学習は、そういった自分を発信するアンテナづくりであり、基本ソフトづくりだ。
広く浅く勉強していくなかで、いつか「これだ!」というものが見つかったとき、この基本ソフトを武器に、狭く深く一つの分野に特化して学び進めばいい。
さて大人の方々にもう一言。
子どもが夢を語らないって?
当たり前だ。親が夢を語り、きらきら輝く大人社会を見せない限り、あなたの子どもが将来に夢を抱くわけがない。
そういう風に育てていないだけだ。
人は皆、母親の狭い産道を通って生まれてくる。そしてオギャーと産声をあげたところから、やがて迎える死という最大のステージへと向かって生きていく。
そう考えてみると生きるってこと自体がストレスの固まりのようなものだ。
そして子どもたちに言いたい。
マラソンが苦手で遅い子にとって、マラソンはヒリヒリするような恐怖と厳しいストレスを伴う事柄かもしれない。
でも、逃げなくたっていいんだ。足の遅い子もいれば手の不器用な子もいる。
みんなそれぞれに得意、苦手があっていいじゃないか。
だからストレスにタフになって生きていこう。
そうした生き方の向こうに小さな喜びが必ずみつかる。
現代はストレスが高いといわれるが、必ずしもそうとばかりは言えない。
「平等」という我が子を思う親御さんの指摘のもとに、主役が何人もいる幼稚園の園祭。
運動会で順位をつけないというような妙な「保護教育」がもてはやされている。
それが、やがてジワジワと子どもたちを弱くし、ちょっとしたストレスにもキレやすい人間をつくり出していく。
持って生まれた魂という意味では人類は皆、平等ではあるが、環境はみな不平等なのである。
そのなかで心が育まれるものだ。
心が育つのは平等環境の中より、ハンデのなかでこそ育つということだ。
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