目先の利害と選択

目先の利害
 人間、執着した心があると、大事な局面で目先の利害にとらわれ、物事を判断して行動をとりやすく、本来の自分にふさわしい選択を逃して将来の発展を損なう場合が少なくない。
執着した心がある場合の弊害の一つに、目先の小さな利害にとらわれる、ということがあります。
物事を冷静にみて状況判断するという、素直な心即ち、執着のない心が働いていなければ、ついつい自分の目先の利害得失に心奪われ、それにとらわれて物事を考え、判断を下し、行動をとってゆくことになりかねないということです。
就職する時に、お金が全てと判断すれば、後には必ず不満を以って退職する結果になるであろうし、どのような職業に就いても心を成長させるチャンスを自らして見逃がすことにもなるでしょう。
社会生活のなかにおいては、お互いが利害得失を考えるというのは、これは人間としていわば当然の姿であって、それを考えつつ物事を判断し、行なうということは、きわめてあたりまえのことだと思います。
しかし、だからといって、つねに自分の利害得失だけを考え、それのみに基づいて物を判断するということになると、これはいささか目先の利害にとらわれた姿であり、そこからは物事はスムーズに運ばないのではないかと思うのです。
つまり、いつも人生につまずき、行き詰まり、挫折を繰り返し、社会を呪うようなことにもなりかねません。
自分の利害にとらわれるということは、いってみれば、その時々の自分の利益になることのみを追い求め、肯定し、損害になることはすべていみ嫌い、遠ざけ、否定する、というような姿であるともいえるでしょう。
しかし、そういう、自分のことしか考えない姿というものは、往々にして他の人々の利害を無視したり、軽視したりすることにも結びつきかねません。
したがって、とかく人々の反発、非難を受けることにもなるでしょうし、いつも人間関係において円滑さを欠く生き方になってしまう。
そこには争いを生じ、自他ともの損失を生むことにもなりかねない。
お互い人間は、相寄って共同生活を営んでいるわけですから、互いに自分一人だけの目先の利害を考えていたのでは、共同生活をスムーズに運営していくことはむつかしいでしょう。
やはり、自分の利益は当然考えるけれども、それと同時に他の人の利益についても考えるということが根底になければならない。
また全てのことにおいて、目先のことだけでなく将来にわたって益になることを考える。
仕事を通じて自分磨きをする。
あるいは将来の夢を実現するために今はこの仕事で辛抱しようという覚悟。
一見、無駄と思えるような時間や人生を過ごしている場合でも成長する為に欠かせないプロセスというものがある。
そのプロセスの中にこそ、自他の利益というものが調和した姿において満たされ、ともどもに和やかに日々をおくっていくこともできるようになるわけです。
しかしながら、お互いが執着した心をもっている場合には、ついつい自分の目先の利害にとらわれて物を考え、事を判断するということになりがちです。
人生を良きものにしている人の場合、やはり人生の岐路に立った場合に、目先の欲によって判断するのではなく、自分が何を目指しているか、何を成したいかを見失っていません。
本来は人生の選択に、正も悪もなく、あるのは時間と学びという過程ではないでしょうか。
次回は22日 月曜日『他力本願&自力本願』ということについてアップ予定です。
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