因果と孤独な最後
妻の死に顔を見ては涙を流し、弔問客の慰めを聞いては涙し、うろたえる老人の姿。
妻に先立たれた夫のSさん80歳は、悲しみに暮れてやりきれない虚脱感に夜な夜な酒場に顔を出し、酔ってタクシーで帰宅するようになった。
『愛別離苦』愛するものと別れなければならない苦しみは誰も避けて通ることはできない。
しかし自宅は仏壇にある家内のほほ笑んだ写真だけで待つ人もなく、わびしさだけが襲ってくる。
受け入れがたい現実に淋しさが毎日のように続いた。
そんな姿を見た子供たちは、『いい年をして飲み屋に通うなんて困ったもんだ』と冷ややかな視線を送っている。
息子は県外に居住して帰れない事情があった。娘たちは皆、同じ街に居住しているから時々行き来はしているが、老いて伴侶を失った男の一人住まいは孤独に悶々とする日が多く、淋しい感情は払拭しきれないものがある。
そうして妻が亡くなった2年後に始まった症状は、小便の出が悪くなり検査をしたら前立腺ガンと診断された。進行していた。Sさんは動揺した。
宅地の一部は道路に取られ、所有の畑と山林は新幹線にとられて土地の代金が2千万円近く入ったが、家の修繕に400万円が消えた。
淋しさで出歩いた飲み屋などの遊行費と末娘の借金にせびられて大部分のお金が消えていった。
末娘の見栄を張った身の丈以上の生活には他の姉や兄も呆れていた。
ただ一人の息子Tさんにも言葉を残さず死んでいった。Sさんが亡くなったときに葬式代を支払ったら預金通帳がほぼゼロになった。
末娘以外の長女と次女は憤懣やるかたない態度で散々文句を放っていた。
Sさんの若いころの家庭は夫婦の争いが頻繁で暴力行為もあり酒びたりだった。
子供たちは戦々恐々とし悲しい思いをして育った。特に一人息子の長男Tさんが子供の頃、そんな父親に不信感を疑問をもって、布団の中で悔しさに泣く毎日だったのである。
親からは平和で優しい愛情を頂けなかったTさんではあるが、その彼も団塊世代。今は愛を持って人々に奉仕している。
Sさんは83歳で娘たちに看取られて他界したが、若いころの心不調和な生き方は老後の最後に影を落とす週末となった気の毒な生き方であり、幸せな最期とはいかなかった。
それは苦悶の死に顔に、悔いを残す表情がハッキリと見えていた。このSさん自身も婿で入ったために親戚筋からの中傷に耐えかねて酒浸りになり、うさを晴らす毎日だった気の毒な人なのである。
人生は不思議なものです。
この世の地獄をみた子供が後に穏やかな人生を歩んでいるかと思えば、幼少の頃より全てに、恵まれて何不自由なく豊かに暮らせた子供が罪を犯し、再犯を繰り返している転落の人生もある。
ここに、過去世を超えた、この世での不調和な生き方の因果を見ることができるのである。
それだけに、この世で生きることは、自らを律して足ることを忘れず、不満と愚痴と怒り、恨み、妬みの心を待たぬ強い決心と勇気が大事なのはおわかりであろう。
とは言っても、私達の日常には受け容れ難い事が起きるものです。不条理なこともあるでしょう。
御主人の両親と同居して傲慢な義父の言葉と行動にパニック症状まで発症した気の毒な奥さんもいます。
こうなると不満も出てきます。愚痴もこぼしたくなるでしょう。時には怒りさえ覚えることもあるだろう。だが、それだけでは問題の改善や解決にはならない。
自分の努力だけでどうにもならないときは環境を変えてみることも必要な場合がある。
そうすることで心の執着、不調和が改善されるのであれば離れてみることも有効な選択肢である。
我慢に我慢を重ねて心が暗くなり、恨みの気持が出てくるようなら、それは回避することも必要であろう。
『怨憎会苦』怨み、憎しみをもつ人にも会わなければならない苦しみもまた、人生にはつきものです。
人間はどのような環境で生活しようとも、、その生きる目的は、ただひとつ、魂のステージアップこの一点なのである。
登山の目的は途中を楽しむことにもありますが、究極はやはり頂上を目指すところにあります。
登山道は東西南北どの方向からでもいくつもあるように、人生の学びにも道がいくつもあります。
そして、人生の学びには登山のルールとマナーが必要なように法則と秩序が必要だ。
その学びは中道に沿った、偏りのない思念と行動することが基準でなければならない。
それは愛と慈悲が根底になければ、法則と秩序とは成り得ないのである。
すなわち人生の頂上は愛と慈悲を我がものとして自覚することである。
この頂上を体験して目覚める時にこそ、私たちは何事にも執着することなく、全くの自然体で人々と共に分かち合うことを率先して行動できるものなのです。
心はふるい立ち
はげみ、身つつしみて
おのれを調うるもの
かかる賢き人こそ
荒波もおかすすべなき
心の島をつくるべし
※辛く苦しい時も心を奮い立たせ、精進して、自分を調える人こそ、本当に賢い人であり、荒れた波も、このような人の心は打ち砕くことはできないものだ。私たちはこの様に、荒波にも打ち砕かれないような島を心に養うことだ。
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