平常心是道

 

朝飯は済んだか?
弟子として入門している数十人もの雲水(修行僧)のなかでも智恵一番と評されている雲水の一人が老師に質問した。
『老師、仏の道とはどのようなものですか?』と。
老師は答える。『朝飯は済んだか?』
雲水が再び問う『仏の道とはどのようなものですか?』
老師『茶碗は洗ったか?』
雲水『いえ、まだです。』
老師『茶碗を洗ってきなさい。』
『はい。』
向上心旺盛な弟子の質問に答えず話を反らす老師の意図はどこにあるのだろうか。
雲水たちは日頃から経典を読み書きしながら一生懸命に知識を吸収している優秀な弟子たちばかりである。
しかし、老師は、その一番優秀な弟子の質問に答えようとしない。何故か。
禅の世界では学問をすること以上に一日の作務(朝起きてから寝るまでの作業、作法)を非常に重んずるのだ。
したがって、全ての行いのなかに気づき(悟り)があるということを重視するのである。
仏の道とは煩悩に振り回されない執着を解脱した境地であるなどと、知識だけで観念的に憶えても、それではいざというときに応用が利かなくなることを老師は悟っていたのだ。
難しく考える必要はない。仏の道というのは、何も特別なことではなく、日々の想いと行いが右にも左にも、上にも下にも偏りがなく、調和された生き方をいうのである。
私たち一般人が仏教界の専門用語を観念的に憶えても、それだけでは何の用もなさないのです。
例えば、
布施 他に対して無報酬で行う奉仕・親切
持戒 仏道を歩む者が守るべきルール・生活態度
忍辱 忍耐や我慢ではなく、真理に即して他人にも自分にも善き結果を求める努力
精進 上記の三波羅蜜を始めとして仏道に励む事
禅定 正しい姿勢と静かな心を保つ事
智慧 真理に即した考えで思索する事
これらが仏の道とは言うが、しかし、このような抽象的言葉の前になくてはならないのが自分の正しく調和された心の在り方である。
布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧、これらを実践するには己の心に偽りや執着があってしては真の仏の道にはならないからである。
その意味で、先ずは自身の心を正しく調えることが大事であるということだ。
上記のような言葉に囚われる必要はなにもない。
要は他を思う愛と慈悲が自己都合によるものではなく、見返りを求めない、押し付けのない、いわゆる私心のない想いから発する行いであるならば真の仏の道といえるのである。
したがって、これを以って仏道という。
平常心是道(へいじょうしんこれどう)
平常心是道という言葉がある。常に平らな心こそが道であるという。
では平とはどういうことなのかというと、囚われのない、執着のない心ということだ。
遠い昔、約1100年ほど前の中国。趙州和尚が南泉禅師に問いました。
趙州、『仏とはどのようなものですか?』
すると南泉は、『平常心是道』といった。
すなわち、執着のない偏りのない毎日にの生活がそのまま道なのだと答えたのです。
趙州は、『それなら、毎日、道が得られるように努めて生きてゆくのがよいのですか?』と聞きました。
すると南泉は、『そんなふうに、これが道か、こうしたらよいのかなどと囚われたらもういけないのだ。』と答え。こう諭したのです。
『道というものは、知識にあるのではない、かといって学ばないこともよくない。知識に囚われると妄想に走り、学ばなければ無知となる。今を生きることに道があること、そのような自分に仏性があることを疑わなければ、限りなく晴れた大空のような境地になれるものだ』と。
求めるのは良いことだが、求めることに拘り、囚われてしまえば妄想になり、求めなければ、そもそも何もしないことになり、進展もないことになる。
私の少ない経験から言えることは、先ず徹して禅定三昧になること。そうするとその奥には求めることを意識しない、拘りのない、キラリと光る自分が座っている。
やはり、何もせずただ座るという座禅をすると眠っているのか、禅定しているのかわからないような自分になる。やはり一心統一していく禅定のやり方が充実してくることがわかる。
こうしてみると『平常心』を手に入れるには、毎日、少しでも努力をして向上することが、大事だということがいえるのです。
禅定は、最初のうちは妄想が限りなく浮かぶのですが、必死で統一を心がけることで妄想が減り、やがて浮かばなくなり、澄み切った意識となってくるものだ。
統一を意識した禅定は、ただぼんやり座禅するよりも心が遥かに磨かれます。
心を磨くことは、何歳になってもできることで、玄峰老師は、『七十歳より八十歳、八十歳より九十歳、九十歳より百歳、いや百歳より死んでからでも心磨きは続く』といわれました。
こうしてくると毎日、年を重ねてはゆくが、努力も重ねてゆかねばならないだろう。
春に百花あり、秋に月あり
夏に涼しい風あり、冬に雪あり
もしつまらぬことに
心頭煩わされ無くんば
年中この世は好時節(極楽)
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