薬の利便性と大きなリスク
身体症状には様々なものがあります。
凝り、痛み、疼痛、シビレ、脱力感、倦怠感、吐き気、めまい、胸痛、腰痛、頭痛、偏頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、震顫(シンセン・ふるえ)、等々その他いろいろありますが、これらは私の院に来院される方々がかかえてくる症状の一部の症状です。
例えば、先日治療した方の事例を紹介しましょう。
「ぎっくり腰でまったく動けず、医大病院の整形外科では入院安静しかないと言われた状況のなかで、泣きながら電話予約しました。丁寧に対応して頂きました。正直今までたくさんの接骨院や鍼灸を歩きましたが、こんな結果は初めてです。全身を見ていただいて一時間後には歩けるようになりました。絶対に通います。」
口コミをしてくださったこの方、実は数回来院しましたが今はおいでになっていません。
よくなったからですが、MRIを撮った医大の処置は鎮痛剤と腰に張り付ける冷湿布だけとのこと。
電話をいただいた日はあいにく予約が取れない状況でしたが、電話のむこうの声は半べそ状態で、冷湿布を貼っても鎮痛剤を飲んでも全く効果がなく、腰が痛くて苦しくて歩けないと、とても気の毒でしたが翌日に予約をしていただいた次第です。
電話では「何とか自分で応急処置ができませんか?」ということでした。
「今すぐに冷湿布をはがして温かいシャワーで冷湿布の成分を洗い流してください。そして腹巻をして腰を冷やさないようにしてゆっくり休んでいてください。」とお答えしました。
翌日治療においでになって「温かいシャワーで腰を洗ってあたためたら底苦しい疼痛が和らいで眠れました。」ということだった。
ここでいつも疑問に思うのは、なぜ整形外科では「炎症」という言葉で痛みに対して湿布で片付けてしまう傾向にあるのかということです。
炎症というと患部が熱をもっていても炎症というのですが、熱をもっていなくても痛みがあるということ=炎症という捉え方もされています。
あるいは患部のレントゲンを撮った結果で炎症としている場合があります。
このようなことことから炎症には冷湿布という処置が整形外科では一般的ではなようです。
今回のように、患部が熱をもっていない状態であるけど痛みがあるというぎっくり腰で病院に行きますと、必ずといっていいほど冷湿布をだします。
ところが、この冷湿布を貼りつけると疼痛を訴える場合がほとんどなのです。
冷湿布が有効なのは、患部が熱をもった炎症状態にあるときだけであって、熱をもっていない痛みの場合は逆に温めたほうが痛みが和らぎます。
熱をもった痛みには、打ち身、打撲、捻挫などであって、さらに内出血しているような状態のときも冷湿布をしなくてはなりません。
患部に対する冷湿布と温める処置の仕方を間違うと辛い思いをするのは患者さんです。
要は患部の症状を診たときに冷湿布をするべきか、逆に温めるべきかという基本的な処置が正しくなされていないことが多いということ。
このことは私の院においでになる患者さんたちの数限りない状況、実態からいえることであり、確証のないことを述べているわけではありません。
冷湿布と鎮痛剤の多用は胃腸障害をもたらす原因にもなりえる懸念から、これまで鎮痛剤を多用している人たち、あるいは現在鎮痛剤を服用しているという来院者にはいつもお伝えしてきました。
鎮痛剤の連用は胃腸に相当な負担を掛けるだけではなく、整体施術の効果に対する自覚が薄れるだけでなく、回復が遅くなりますよと。
なぜ回復が遅くなるのか、それは鎮痛剤で痛みを抑えれば抑えるほど、根本的原因が改善されていない状態なのに体を使ってしまうから更に歪みを悪化させてしまうことになるためです。
鎮痛剤を大量に使用する、ステロイド系の強い鎮痛剤を使用することは決して体の為にはならないということを来院する患者さんにお伝えしてきましたが、その事情もお分かりいただけるかなと思います。
さてきょうは、日頃から鎮痛剤の処方や多用について懸念をしていたことが昨日の読売新聞(2015・8・10)「医療ルネサンス」に取り上げられていましたのでその記事を転載させていただきました。
参考にしていただければと思います。
以下医療ルネサンスから。高齢者の薬
鎮痛薬で胃潰瘍、食欲不振
「胃がむかむかして、食事がのどを通らない。1か月で体重が5諺減った」そう訴える独り暮らしの男性Cさん(79)が今年5月、東京都江東区の東京城東病院の内科外来にやってきた。
脱水、貧血、血圧低下など、衰弱が著しく、そのまま入院することが決まった。
食欲不振は数か月前から続いているといい、胃の内視鏡検査を行うと、直径3センチ程度の胃潰瘍ができていて、そこから出血していることが判明した。
貧血は、栄養失調だけでなく、胃の出血も影響しているとみられた。
それにしても、どうして、そんな大きな胃潰瘍ができたのか。総合診療医の本橋伊織さんは、Cさんの薬の記録をチェックして、以前から使っていた強力な痛み止めの座薬に目を留めた。
「非ステロイド系消炎鎮痛薬」と呼ばれるタイプの薬だ。
腰痛やひざ痛などを訴える高齢者によく処方される。
痛みを抑える反面、胃腸を傷める副作用が出やすい。
長期間使い続けて潰瘍が悪化すると、胃に穴が開くこともある。
出血も影響しているとみられた。それにしても、どうして、そんな大きな胃潰瘍ができたのか』総合診療医の本橋伊織さんはヽCさんの薬の記録をチェックして、以前から使っていた強力な痛み止めの座薬に目を留めた。
Cさんも、慢性的な腰痛を抱えていたため、受診した整形外科で、この薬を処方されていた。
入院中に、この非ステロイド系消炎鎮痛薬の使用をやめ、胃薬を飲むことで、胃のむかつきは消え、食欲も戻った。
ただ、Cさんが訴えていた痛みは単なる慢性的な腰痛のせいだけではなかった。
本橋さんが、背中の腫れに気づき、画像検査をすると、背骨の圧迫骨折と肋骨骨折が見つかった。
これに対しては、背骨に負担がかかりすぎないようコルセットを巻いて保護し、安静にして骨がくっつくのを待った。
患者の記録を見ながら、処方されている薬の必要性を検討する総合診療医たち(東京都江東区の東京城東病院)
「痛みの原因に目を向けず、強い薬を足していくだけでは、効果より副作用の害が大きくなる危険もあります。
Cさんのケースを見て、そんな思いを改めて強くしました」と本橋さん。
元々Cさんは複数の内科や精神科、整形外科に通院しており、計20種類以上の薬を処方されていた。
骨折のきっかけは本人に聞いても不明だが、大量の薬の相互作用でふらつきなどを起こし、どこかで背中をぶつけたり、尻餅をついたりした可能性も否定できないという。
Cさんの場合、約1か月間の入院期間中に、副作用が軽い別の鎮痛薬、胃潰瘍の治療薬、ぜんそくの薬、高血圧の薬など、6種類に整理された。
経過は順調で、さらに胃潰瘍の薬などは減らせる見込みだという。(高橋圭史、館林牧子)
以上が転載させていただいた記事内容です。
20種類上の薬を6種類まで整理して、結果的に患者さんが回復に向かったという事例ですが、こういった事例は私の院でも何ら珍しいことではありません。
必要な薬と不必要な薬を正しく選別する判断力は、医師の医療に対する考え方と、経験、洞察力などに委ねるところであります。
※きょうも最後までお読みくださいまして感謝もうしあげます。
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